独立や起業を考えるなら知っておきたい「下請法」

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これから独立を考えている人も、すでに起業している人も、親事業者から発注を受ける場合に知っておきたい「下請法」。平成28年12月に運用基準が改正された下請法は、一定規模を超える会社(親事業者)が一定規模以下の会社または個人(下請事業者)へ業務を委託する際に適用される法律です。“一定規模”と表現しているのは、委託内容や資本金区分によって親事業者、下請事業者の定義が異なってくるからです。それでは下請法の概要を見てみましょう。

下請法とは?

一般的に「下請法」と呼ばれていますが、正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」といいます。この法律は昭和31年に制定されました。以前は親事業者が、委託先の下請事業者に対して、発注後に一方的に代金減額をしたり、支払いを延期したりすることが頻繁に行われていました。そこで弱い立場である下請事業者の利益保護や下請取引の公正化を目的として下請法が制定されたのです。
下請法が対象としている委託取引は多岐にわたりますが、以下はその一例です。

  • 自動車メーカーが部品メーカーへ部品の供給を委託すること
  • デパートやスーパーが食品メーカーへ自社オリジナルブランドの製造を委託すること
  • 自動車のディーラーが車の修理業者へ顧客の車両修理を委託すること
  • 広告会社がCM制作会社へ自社が受注した企業のCM制作を委託すること
  • アパレルメーカーがデザイン会社へ衣料品のデザインを委託すること
  • ビルメンテナンス会社が清掃会社へ自社が請け負ったビルの清掃を委託すること
  • デジタルコンテンツ会社がホームページ制作会社へ自社のホームページコンテンツの制作を委託すること

何となくイメージはつかめたでしょうか?また、下請事業者は会社とは限りません。個人起業主の場合もあります。上記の例でいう「デザイン会社」や「ホームページ制作会社」は、個人事業主や小規模会社というイメージがあるかもしれませんね。

親事業者の禁止行為や義務

親事業者は下請事業者と取引するにあたり、次の4つの義務が課されています。

1.下請事業者へ発注する際に発注内容を書面にする義務
この義務は、あとになって約束が違うというトラブルが発生しないよう課されています。
2.下請事業者へ発注する際に支払期日を決める義務
親事業者が不当に支払い期日を延ばしたり変更したりすると、下請事業者の経営が行き詰まることがあるため、そうした事態を防ぐ目的で課されています。支払期日は納品後60日以内のできる限り短い期間とされています。
3.下請事業者との取引記録の書面を作成して保存する義務
親事業者は、下請事業者との取引記録を書面として残す義務、その書面を2年間保管する義務があります。親事業者による違反行為があった際に、親事業者へ注意喚起すること、公正取引委員会および中小企業庁による迅速かつ正確な調査・検査が行われることを目的としています。
4.下請事業者への支払いが遅れたら、遅延利息を支払う義務
下請事業者が納品して60日以内に親事業者が支払いを行わなければ、60日を経過した日から実際に支払われるまでの期間、年率14.6%の遅延利息を支払うことになります。

また、親事業者が下請事業者に対して圧力をかける行為は禁止されています。禁止されている行為の一例は以下のとおりです。

  • 下請事業者に責任がないのに納品物を受け取らないこと
  • 下請事業者に責任がないのに減額要求をすること
  • 下請事業者に責任がないのに不当に返品すること
  • 親事業者の違反行為を公正取引委員会や中小企業庁へ通報したことに対して報復を行うこと
  • 親事業者が下請事業者に物品を強制的に購入させたり、保険やリースなどを強制的に利用させたりすること

親事業者が上記の義務を履行しない、または禁止行為があった場合、公正取引委員会や中小企業庁による立ち入り検査の実施や、勧告の公表、または最高50万円の罰金が適用されます。

下請事業者の相談窓口

下請事業者が親事業者から不当な扱いを受けた場合、下請事業者は泣き寝入りをするしかないのでしょうか?もちろん、そんなことはありません。下請事業者が親事業者から不当な扱いを受けたら、以下の窓口に相談することができます。

  • 公正取引委員会事務総局内、経済取引局取引部企業取引課をはじめ、各地域事務所など
  • 中小企業庁事業環境部取引課をはじめ、各地域経済産業局など

いきなりこのような役所へ相談することが難しい場合、最寄りの商工会または商工会議所に設置されている「独占禁止法相談ネットワーク」や、「公益財団法人全国中小企業取引振興協会」および「都道府県中小企業振興機関(都道府県協会)」でも相談することができます。


大企業との取引はメリットも多い反面、力関係の差に躊躇する経営者や個人事業主もいるでしょう。しかし、現在は下請法がきちんと整備されているので、安心して取引を行えます。下請事業者と親事業者の良好な関係構築を目指したいものです。

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ライター紹介

丹所美紀
アステル行政書士事務所代表 行政書士・知的資産経営認定士
「皆様の明日を照らす」を理念とし、建設業許可申請をはじめとする各種許認可申請、知的資産経営支援、事業計画書や補助金申請書等の作成代行、遺言相続業務、会社設立支援、外国人関連業務等に従事。
ホームページ:名古屋遺言書作成支援センター