日本はキャッシュレス後進国?普及が進まない理由とは

マネープラン

日本は支払い時に現金を利用する人が多く、キャッシュレス化は進んでいません。キャッシュレス決済は利便性が高く、消費者にとってもメリットが多いはずですが、なぜ日本では普及率が低いのでしょう。その理由や今後の取り組みについて解説します。

日本におけるキャッシュレス化の現状は?

まず、キャッシュレス決済にはどのようなものがあるのか見てみましょう。

  • クレジットカード:カードをスライドさせて情報を読み取る/後払い方式
  • 電子マネー:事前に現金をチャージし、専用端末にかざすことで決済
  • デビットカード:カードをスライドさせて情報を読み取る/銀行口座から即時払い

この他にも、モバイル端末に会員証やポイントカードなどの機能を格納し、即時決済できるモバイルウォレットも登場しています。現金決済が主流ですが、キャッシュレスの決済手段は増えているのですね。

日本のキャッシュレス決済比率
経済産業省が公表した「キャッシュレスの現状と推進(平成29年)」(注1)によると、日本のキャッシュレス決済比率は2016年で20%です。2008年は11.9%だったので普及は進んでいるように見えます。しかし2015年時点で、米国は40%以上、韓国や中国は50%以上となっています。海外の先進国と比較すると、日本のキャッシュレス化はかなり遅れているといえるでしょう。 政府は2020年の東京オリンピックも見すえ、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%程度にまで引き上げることを目指しています(注2)。

日本でキャッシュレス化が進まないのはなぜ?

日本でキャッシュレス化が進まない理由として、どのようなものがあるのでしょうか。

ATMと手数料の存在
1つ目はATMの存在です。日本はATMがいたるところにあり、いつでも現金を引き出せるため、キャッシュレス決済の需要が低いと考えられています。
また、銀行の収入基盤となるATM手数料も要因のひとつでしょう。2016年3月期における地方銀行の平均的な純利益は約147億円で、うち約13%はATM手数料となっています。セブン銀行においては、純利益261億円の99%がATM手数料収入です(注3)。キャッシュレス化が進むとATMを利用する機会が減り、手数料収入も減少するため、銀行はキャッシュレス化に対して慎重になっていました。
しかしATMは機材の価格が高く、メンテナンスや防犯対策、現金輸送などのコストもかかります。ATMの維持にかかる費用は金融界全体で年間2兆円とされています。
消費者が重視するのは利便性よりおトクさ
2つ目は消費者の決済に対する考え方です。2018年6月に日本銀行が実施した「生活意識に関するアンケート調査(第74回)」(注4)によると、決済手段を選ぶ際に重視する点は、下記のような回答でした。
  1. ポイントや割引などの便益面 50.6%
  2. 支払い金額の大きさ 41.5%
  3. 支払い手続きのスピード・簡便性 37.2%
最多は「ポイントや割引などの便益面」、つまり金銭的なメリットやおトクさを重視していることがわかります。また同調査によると、現金以外で利用する決済手段としては、多い順に「クレジットカード(70.2%)」、「金融機関口座からの自動引落(63.4%)」、「金融機関窓口やATMからの振込(42.2%)」となりました。
日本では、「現金決済を主流」としつつ「金額の大きい買い物は、ポイントや割引などのメリットがあるクレジットカード決済」といった形で、決済方法を使い分けているようです。
「手に取れないお金」への警戒感
3つ目としては、消費者の心理的な障壁があるでしょう。プリペイドカードやスマートフォンを利用したキャッシュレス決済は、仕組みの分かりづらさや利用端末の制約もあり、特に高齢者への普及は難しいかもしれません。また、現金と異なり「手に取れないお金」のため、使いすぎを心配する人もいるでしょう。
前述した日本銀行の調査によると、インターネットバンキングを使わない理由の1位は、「ATMの利用で足りるため必要がない(59.4%)」、2位は「セキュリティなど安全性に不安がある(54.5%)」となっています。セキュリティへの不安を感じる人も多いのですね。

キャッシュレス化に向けたさまざまな取り組み

キャッシュレス化に向けて、企業や自治体による取り組みが始まっています。具体的に見てみましょう。

3大メガバンクがQR決済の規格統一
2018年5月、三菱UFJ、三井住友、みずほのメガバンク3行はQRコード決済の規格統一を目指すことで合意しました。店頭でスマートフォンをQRコードにかざすと、支払額が銀行口座から引き落とされるしくみです。メガバンクが動き出したことで、地方銀行もQRコード決済を取り入れ、日本全体で急速に普及が進むことも考えられます。
LINE Payと福岡市による実証実験
コミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」上で決済や送金のサービスを可能にする「LINE Pay」。このサービスを提供するLINE Pay株式会社とLINE Fukuoka株式会社は、福岡市と協力して街のキャッシュレス化を推し進めます。市内にある美術館や動植物園、屋台やタクシーなどの施設や乗り物で「LINE Pay」を導入し、市民の利便性向上に向けた実証実験を行います。LINEグループは、自治体との連携に前向きに取り組む意向を表しているため、今後他の地域でも新たな取り組みが実施されるかもしれません。
VISAとイオンが提携
VISAカードは、クレジットカードやスマートフォンのアプリを専用端末にかざすことで決済できるタッチ式の機能を有しています。イオンは、このシステムに対応した端末を、国内1万6,000店舗以上で導入すると発表しました。これにより日常の買い物もキャッシュレス化が進みそうです。

日本でキャッシュレス化が進まない理由には、いくつもの要因があります。しかし、着実にキャッシュレス決済の存在感は増してきています。今後、どのようにキャッシュレス化が進むのか楽しみですね。次回は、キャッシュレス化が進んでいる海外の事例についてご紹介します。

ライター紹介

横山晴美
企業に所属せず、中立・公平の立場で活動する住宅系ファイナンシャルプランナー。新規購入・リフォーム・二世帯住宅を問わず、家に関することなら購入額から返済計画まで幅広く対応。また、住宅購入は家計・教育費・老後資金・相続など多くの視点が必要なため、ライフプランを見据えた相談を行う。
ホームページ:ライフプラン応援事務所
出典:
  • (注1)経済産業省|キャッシュレスの現状と推進
  • (注2)経済産業省|キャッシュレス・ビジョン
  • (注3)東洋経済ONLINE|日本が現金払い主義からまるで脱せない理由
  • (注4)日本銀行|「生活意識に関するアンケート調査」(第74回)
  • 本ページの内容は2018年9月10日時点での情報です。
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