鮮やかな色のエクステンションを髪に付け飛び跳ねるパリの少女。金髪に染まった自分の髪を誇らしげに眺めるブータンの青年。いまふうな髪に変身して踊り出すホームレスの男性。
これらは美容師のミツモリヨシヒロさんが、世界中で髪を切るプロジェクトをまとめた写真集『TOUCH』での光景だ。「この活動でお金を稼ごうとは思っていません。髪を切った人たちが笑顔になるのがいちばん」
「美容師の創作表現は、奇抜な髪型のヘアショーをしたりとマニアックで一般の人には伝わりづらい。何かほかにもできることがあるのでは」と長年、美容師をしながら疑問を抱いていた。「美容師は休みがなくて辛い仕事って言われ続けるのも嫌で。たとえ10日間休んで人生がおかしくなるのならもう仕方ないかなと。それで何の確証もないまま、美容室を飛び出して世界中に髪を切りに行こうと飛行機のチケットを買ったんです」そうしてパリやハワイ、NYと単身で訪れ、渡航費も滞在費も自腹を切りながら現地の人たちの髪を切り続けた。次第にその活動に共鳴したカメラマンやスタイリストらクリエイターたちとチームを結成することになる。コンセプトは〝世界を挑発する。チーム名は、外国の人にもわかりやすい日本語で〝何かを突き詰めるという意味を込めて「OTAKU」にした。ブータン、パリ、アイスランド、そして大阪・西成。これまでミツモリさんらOTAKUが訪れた場所だ。パリを訪れたのは、夏至の日に開催される音楽祭の時だった。

夕方6時頃から朝3時まで街中で音楽が大音響で流れる中、路上でビビッドなカラーエクステンションを使って即興のヘアアレンジを始めた。意外にも保守的なファッションが多いパリ。髪で遊ぶということを体感してもらいたかった。「出会った人たちにとって、何かのきっかけになってほしい。新しい髪型にチャレンジしたことで未来につながる可能性もありますよね。そしてぼくらメンバーにとってもゼロから即興で作り上げるというチャレンジであり、同時に未来への投資でもある。

この活動を通してメンバーが新たなステージにつながっていければと思うんです」実際、彼自身もパリの路上で活動している最中にファッションデザイナーに誘われ、パリコレのヘアメイクを担当し新たな境地を広げた。次の候補地はキューバ。人種や国境を超え髪を切った人を笑顔にする。彼らの果てしない旅は続く。

ミツモリヨシヒロ Yoshihiro Mitsumori
美容師

1978年、大阪生まれ。大阪・高槻にあるLINE hair salonオーナー。美容師の表現に疑問を抱き、単身で海外に髪を切りに行くプロジェクトを始めた。次第に各方面で活躍する写真家、スタイリストが共感し、「OTAKU」を結成。「世界を挑発する」をテーマに国内外で活動する。2015年、これまで髪を切ってきた国々の風景をまとめた写真集『TOUCH』¥3,240(フォイル刊)が発売中。

LINE hair salon:www.line-hair.com
写真集TOUCH:www.otaku-project.com

photograph by Shin Ebisu / Sayaka Bono / Yusuke Okada
text by Akiko Wakimoto

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