人気の観光地が抱える悩み…オーバーツーリズムとは

マネープラン

観光客の増加は、観光地にとってメリットのように思えます。しかし、観光客が集中することによる弊害は“オーバーツーリズム”と呼ばれ、世界中でさまざまな問題を引き起こしているのです。今回は、国内外でのオーバーツーリズムの事例や、解決に向けた対策について見ていきましょう。

オーバーツーリズムとは?

オーバーツーリズムとは、観光地のキャパシティをはるかに超える数の観光客が訪れる現象のこと。観光地に害をおよぼすオーバーツーリズムは、「観光公害」とも呼ばれ、今や世界中の観光地で問題となっています。
オーバーツーリズムが生じる背景にあるのは、格安航空会社(LCC)の普及やAirbnb(エアビーアンドビー)といった安価な宿泊施設の台頭などによる観光客の激増とされています。

国内の主要観光地の現状は?
金閣寺や清水寺といった人気スポットが数多くある京都と、自然観光やスキーを目的に訪れる観光客が多い北海道を例に見てみましょう。
京都府商工労働観光部が発行した「京都府観光入込客調査報告書」(注1)によると、2018年の京都府内の観光消費額は約1兆3,701億円となり、前年と比較して2,000億円近く増加。外国人宿泊客数は約459万人となり、前年の361万人を大幅に上回りました。いずれも、6年連続で過去最高を更新しているということで、観光地としての人気の高さがうかがえます。
また、北海道経済部観光局が発行した「北海道観光入込客数調査報告書」(注2)によると、国際線の新規就航や増便といった影響を受け、 2018年の外国人観光客数は312万人となり、過去最高を更新しました。これは日本全体の訪日外国人観光客の約1割を占めています。

オーバーツーリズムの実例を見てみよう

駅での住民優先入場を試験導入した鎌倉市
鎌倉市では2017年、約17万人の人口に対して、約2,129万人の観光客が押し寄せました。その結果、食べ歩きや危険な撮影などによる迷惑行為が増え、住民から苦情が上がったのです。観光客は市内を走る江ノ電にも殺到し、行楽シーズンには電車に乗るまで長い待ち時間を要することになりました。そこで鎌倉市がゴールデンウィークの期間中に試験導入しているのが、“住民を優先的に駅へ入場させる”という社会実験です。この取り組みは2017年から実施されていて、住民や観光客からもおおむね好意的に受け入れられているようです。
騒音や落書きなどが多発する京都市
国内外から年間5,000万人以上が訪れる京都市では、騒音問題や交通渋滞の悪化、外国人観光客が竹林に落書きするなどのトラブルが報告されています。こういった問題に対処していくため、京都市は一部の地域で、観光マナーの周知・啓発に係る実証事業を始めています。
生態系が崩れてしまったタイ
タイのピーピーレイ島マヤ湾は、2000年に公開されたハリウッド映画「ザ・ビーチ」のロケ地となったことをきっかけに人気が沸騰しました。その結果、1日に200台のボートで約4,000人の観光客が訪れ、サンゴの大部分が消滅する深刻な被害が発生しました。生態系を回復させるため、タイ政府はマヤ湾への観光立ち入りを一定期間禁止する措置を取っています。
海洋汚染が深刻化したフィリピン
フィリピンのボラカイ島では、過剰な観光客により海洋汚染が深刻化しました。そのため、2018年に半年間観光客の立ち入りを禁止し、排水処理施設の整備などを行いました。その後、観光客の受け入れは再開しましたが、一日の受け入れ人数や、滞在できる人数に制限が設けられています。

どのような対策が有効なのか?

オーバーツーリズムによる被害は深刻ですが、地域経済の活性化に観光客が欠かせないのもまた事実でしょう。こうした悩ましいオーバーツーリズムには、どのような対策と課題が考えられるのでしょうか。

観光客を誘導、分散させる
近隣の観光エリアと協力し、観光客が分散されるようインフラを整備すれば、特定のエリアに観光客が密集することを防げるでしょう。しかし、インフラ整備には多額の費用が必要となります。
また、過密状態に陥りやすいエリア内で近隣地域をPRすることにより、観光客の誘導や過密状態の緩和を図ることが可能です。その際には、観光客の嗜好や関心を分析したプロモーションをどう実施するかが課題となるでしょう。
観光客の数を減らす
エリア外から来る観光バスの乗り入れを禁止する、運行本数を減らすなどの対策で観光客の増加を防ぐことができると考えられます。また、入場料の設定や一日の入場人数に上限を設けるといった方法もありますが、地域全体が観光地化しているような場合は、規制が難しい側面もあります。
民泊の年間営業日数に上限を設ける、店舗を構える場所を規制するなど、エリア内にある観光客向け施設の営業を規制する方法も考えられます。これにより、観光客の滞在期間を短縮でき、一時的に人数を減らすことが可能となります。ただし、観光収入は減少するため、地元の観光業者からの反発は避けられないでしょう。
観光客のふるまいを規制する
日本の観光地でも、迷惑行為に関するマナー条例の制定を行っている地域があります。条例によって観光客の迷惑行為に対する抑止効果が期待できますが、条例の周知方法やその実効性が課題となります。

国内外でオーバーツーリズムが生じ、大きな問題となっています。しかし、観光客による収入が減ってしまっては観光地にとって打撃となるでしょう。増加する観光客にどう対処するか、収入の確保をどうするか、観光地が抱える課題は増えています。

参考:
  • (注1)京都府商工労働観光部|京都府観光入込客調査報告書
  • (注2)北海道経済部観光局|北海道観光入込客数調査報告書
  • 本ページの内容は2019年9月25日時点での情報です。
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