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長谷川あかり
HASEGAWA AKARI
料理家・管理栄養士
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はせがわ・あかり|1996年、埼玉県生まれ。10代で芸能界入りし、子役タレントとして活躍。22歳で引退し、大学で栄養学を学ぶ。2022年より、料理家・管理栄養士として発信をスタート。『クタクタな心と体をおいしく満たす いたわりごはん』(KADOKAWA)、『時間が足りない私たちの新定番「私、天才かも!」レシピ』 (講談社の実用BOOK)など著書多数。
忙しい現代人に寄り添う料理家・長谷川あかりさんの、生きる力を取り戻せた、あの日の買い物
忙しい日でも手軽に作れて、満足感のある体に優しいレシピが人気の料理家・長谷川あかりさん。
子役としてキャリアをスタートさせ、のちに料理家へと転身した長谷川さんだが、その背景には、高校時代に買ったある一冊の本が関係しているという。
長谷川さんにとって買い物は、人生のターニングポイントのようなものかもしれない。運命の一冊との出会いから最近のショッピング事情まで、長谷川さんの買い物にまつわる話を伺った。
生きる活力を取り戻すきっかけになった、レシピ本と料理

真っ白な壁にカラフルな家具が映える、長谷川さんのご自宅。ここで話を聞かせてもらうことになった。お気に入りの本棚から出してくれたのは、長谷川さんが料理家への道を歩むきっかけになったレシピ本だ。
「子役は大人になるにつれて、タレントや俳優にキャリアアップをしていくのですが、私はそれがうまくいかなくて……高校生の時にメンタルの調子を崩してしまったんです。そのせいで食欲も湧かなくなって、これはまずいと思っていた時に出会ったのが、栗原はるみさんのレシピ本『ごちそうさまが、ききたくて。』(文化出版局)」

「『たこの香味サラダ』とか、今まで食べたことも、聞いたこともない料理がたくさん並んでいて、どんな味なんだろう?食べてみたい!と純粋に食欲が湧きました。この本に出会っていなかったら、こうして今元気に暮らせているかどうかもわからない。それくらい大事な本です」
結婚を機に、料理が日常になるなかで、長谷川さんは一人戸惑っていた。料理が楽しくなくなってしまったのだ。そんな状況を打破するきっかけになったのが、有賀薫さんの『スープ・レッスン』(プレジデント社)。

「高校生で料理が大好きになったものの、結婚していざ家事として料理をすることになったら、“あれ?楽しくないかも”って(苦笑)。それまで料理を楽しめていたのって、趣味的に手の込んだものを作れるからだったんですよね。それが毎日のこととなったら、コロッケみたいな複雑な料理は作っていられない。けど、料理が楽しいことも知ってしまっているから、妥協もできない。有賀先生の料理は、実用と趣味のちょうど真ん中にあるんですよね。作って楽しくて、だけどちゃんと日常に寄り添ってくれる。私もこんなレシピが作りたい、提案したいと思うようになったのも、有賀先生の本を読んだから」

「世界中のいろんな料理やその語源をインプットして、それを生活に馴染むレシピに最適化すること、さらに、疲れていても作りたくなるようなときめきのあるレシピにアップデートして出すのが自分の仕事です」
大学で学んだ栄養学の知識が、料理家としての土台に

次に見せてくれたのは、なんだか難しそうな言葉が書いてある教科書。大学で栄養学を学んだ長谷川さんが、授業で実際に使っていたものだ。この時の基礎があるから、今も料理家を続けていられるという。
「大学に入学したのは22歳の時。結婚を機に芸能界を引退して、自由な時間ができた時に、そういえば、大学行ってなかったなとふと思って。料理が好きだったからという単純な理由で、栄養士の資格が取れる学部に進学したんです。その時に買った教科書は今でもたびたび見返しています」
「特に役立っているのは、食中毒や寄生虫、毒性のある食物などについて書いてある『食品衛生学』。食中毒のリスクを知っているかどうかは、安全なレシピを提案するうえでとても大事なこと。実は腐敗と発酵の違いって、人間にとって好ましいか好ましくないかの差なんですよ。面白いですよね」

「栄養学は無事修められましたか?」と聞くと、真面目な長谷川さんらしい答えが。
「4年間学んでみて、やっとスタートラインに立てた感じです。栄養学や料理に対して、誠実に向き合う土台はできたけど、知識としてはまだまだ。でも、真面目に学んだからこそ、読者の方に“これを食べたら元気になりますよ”と、強い言葉で言い切ることができない。断言しちゃったほうが料理家としては人気が出るかもしれないけど、そんな単純なことじゃないとわかっているから言えないんです」
自宅は、心にエネルギーをくれる好きな色とデザインで満たしたい
部屋のあちこちに配置された、カラフルな家具の正体についても聞いてみた。派手な色が好きだと気が付いたのはつい最近だという。
「USMハラーの家具は、自分で色をカスタマイズできるところが気に入っています。家の中のキャビネットはほとんどUSMハラーのもの。オレンジとか緑とか黄色とか、原色がとにかく好きなんです。家具って毎日目に入るものだから、明るくて元気が出る色がいいなって。料理も同じで、今日は元気がないなっていう日は赤いもの、むくんでいる日は緑色の食べ物が食べたくなります。それくらい色から影響を受けやすいみたいです」
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今年出版したレシピ本のテーマカラーに合わせて、オレンジと黄色をセレクト
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お気に入りの野菜の人形たちが部屋中に
最近、レシピ本の出版が続いている。撮影の多くは自宅で行われるため、使い勝手のいい大きめのダイニングテーブルを新調した。

「カラフルなものも検討したのですが、テーブルで料理の写真を撮ることもあるので白にしました(笑)。ジャンルレスな料理を提案したいと思っているので、白いテーブルはどんな料理にもマッチして使い勝手がいいです。フリッツ・ハンセンのこのテーブルは、天板は白でも、脚がシルバーでキラッとしていて私の趣味にもぴったり」
大きな買い物には、自分の歴史が刻まれていく

長谷川さんの手に、大ぶりのアクセサリーが輝いていることは取材の最初から気が付いていた。「素敵ですね」というと、実は手にコンプレックスがある、と話してくれた。
「料理で手が荒れやすいのと、小さい頃に空手をやっていたのもあってか、手がゴツゴツしていて、自分の手があんまり好きじゃないんです。リングをじゃらじゃら重ね付けすることで、そういうコンプレックスを隠してくれる役目もあります。それに、大ぶりなアクセサリーを着けていると強そうに見えるのか、街中で嫌な思いをすることが減りました(笑)。武装みたいな感じなのかもしれませんね。中指、人差し指、薬指のサイズがほとんど一緒なので、指輪をあちこち付け替えるのが好きです」

高額な買い物、どうしても思い切れません……と相談すると、「そういう時は人のせいにしちゃいましょう!」と無邪気に笑う長谷川さん。
「ジュエリーや家具は、気軽に買える値段じゃないので、買うまで悩むことも多いです。もう何年も悩みっぱなし、なんてこともあります。自分の選択に自信が持てなくて、長く使えるかな?これとこれ合うかな?と、考えすぎてしまうタチで……。そんな時は、友達や夫に一緒に来てもらって、背中を押してもらっています。これかわいいじゃん!って言ってもらえると、やっぱりそう思う?なんて(笑)。それくらいある意味人任せでいいんじゃないかな。決断って難しいですから」

「大きな買い物には自分の歴史が刻まれていくような気がします。“あの時にこれ買ったな”と思い出になっていくんです。仕事や日々の生活を頑張る原動力になったり、会話の種になったり。“流行ってるからほしい”よりも、“こういう理由があってほしい”というものが蓄積していくと、それが自分のストーリーになっていくし、人生の幅のようなものにつながっていくんじゃないかな」