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SHOW-GO
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ヒューマンビートボクサー
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しょうご|1999年、北海道生まれ。中学生の頃にYouTubeでビートボックスに出会い、独学で技術を習得。数々の大会で好成績を残し、世界から注目されている。口から出した音のみを使った楽曲『Beatbox Only』をはじめ、作詞作曲や映像、デザインなど、制作すべてを自身で手掛ける。近年ではアーティスト活動に力を入れ、ビートボックスにこだわらない“抄語(しょうご)”名義での音楽活動を開始。現在は京都の町家スタジオから作品を世に送り出している。
10年後の余裕より、今の熱量。
ヒューマンビートボクサー・SHOW-GOさんの暮らしを豊かにする買い物
北海道から京都に移り住んだヒューマンビートボクサーのSHOW-GOさん。20代にして築80年以上の町家を購入し、自ら手を動かしながらこだわりのスタジオへと育てている。
町家購入という大きな選択と、自ら選び手にしてきたものたちは、彼の音楽活動や生き方に何をもたらしているのか。買い物が静かに支えてきた、創作と生活の関係を聞いた。
時間をかけて育てる。秘密基地のような町家のスタジオ
「札幌にいた頃から、京都は暮らす場所として落ち着く気がしていたんです」
高校の修学旅行で訪れて以来、京都で暮らすことに憧れを抱いていたというSHOW-GOさん。2022年に京都に移り住んで出会ったのが、作品づくりに集中できる静けさと、生活の温度がほどよく混じり合ったこの町家だった。
「北海道出身なので、“路地奥”という概念があまりなくて。狭くて細い路地を抜けた先に、急に空間が広がる。そこに京都のロマンを感じたんです。それから、古いのにすごくきれいで。前に住んでいた方が大切に暮らしてきたんだろうなって空気で分かりました。愛されてきた家だと感じて、この町家を引き継ぎたいと直感的に思いました」
一般的には、個人がスタジオを持つのはもう少し年齢を重ねてからというイメージがある。SHOW-GOさん自身、迷いがなかったわけではない。
「スタジオを購入するには、早すぎる年齢だったかもしれません。だけど、10年後も同じ情熱をかけて音楽をやっている保証はない。だったら、気持ちがいちばん強い今のうちに、最高の環境を整えようと思ったんです」
未来の余裕ではなく、今の熱量を信じて手に入れたスタジオは、SHOW-GOさんにとって大きな覚悟のうえでの買い物だった。
1年近くかかったというスタジオの改装は、ほとんど自身の構想によるもの。木の柱や土壁、畳といった自然素材が中心で、人工の防音材は最小限。特にこだわったのが、伝統の三和土(たたき)づくりだ。
「土に石灰とにがりを混ぜて床に広げ、みんなで叩いて固めるんです。今まで当たり前に暮らしてきた平らでツルツルな床とは大きく違って、凸凹で自然的。触っても歩いても気持ちが良くて、経年の変化も含めて楽しめるんです」

町家の不完全さも心地良さの一部だという。
「床の凹凸もあれば隙間風も入る。でも、それが自然素材でつくられている証拠で、美しいと感じられるんです。完璧さや効率などが重要視されがちなこの時代においても、“未完成の状態でいい” “ありのままでいい”という確信が、自分の中に土台としてできた気がします」
一枚の布が気持ちを切り替える。染色家・石北有美さんの暖簾

スタジオの入口を仕切るのは、染色家・石北有美さんの暖簾。福岡での仕事の帰りに立ち寄った店で、偶然出会ったものだ。
「風を感じるものを集めた企画で展示されていたんです。向こう側が透けて見えるくらい薄い生地ですが、空間を精神的に仕切れる感じがすごく良くて。一目惚れでした」
暗めで落ち着いたスタジオに、赤や黄色がさりげなく色を添える。SHOW-GOさんにとって、この暖簾は単なるインテリアではなく、制作モードに入るためのスイッチだという。
「この暖簾のおかげで、ほど良い明るさと色が生まれて心も軽くなります。ここをくぐれば、“さぁ音楽をつくるぞ”という気分になれるんです」
制作の土台を整える一枚板のデスク

デスクとして使っているのは、京都の家具工房『TORINOKI FURNITURE』にオーダーした楡欅(ニレケヤキ)の一枚板。木の節や木目、手触りなど、そのすべてがお気に入りだ。
「長くいる場所こそ、自然素材のものが良いと思ったんです。だからあまり加工もせずに、木の心地良さをそのまま残してもらいました。楡欅ならではのどっしりとした優しさがあって触るたびに落ち着くというか、集中して制作に入っていける感じがするんですよね」
録音機材が並ぶスタジオでも木の存在感が圧迫することはない。むしろ音を整えるための土台になってくれる感覚があるという。

暮らしをもっと好きにさせてくれる民芸品
「生活することが趣味なんです。暮らしより楽しいことはないですね」とSHOW-GOさんは笑う。器や雑貨といった民芸品は、その暮らしの楽しさを支える大切な存在だ。
「民芸の魅力は、誰が作ったかということよりも、実用的で丈夫なもののなかに自然に生まれる“用の美”だと思います。人の生活を豊かにするものを作ろうという気持ちに美しさを感じます」
日常に溶け込み、使うたびにワクワクさせてくれる民芸品。その存在が、暮らしをより楽しいものにしてくれるという。
「温泉旅行に出かけたり、仕事で地方に行ったりしても、最終的には日常に戻りたくなるんです。旅先で好きな器を買ったりすると、それを使う生活に戻るのが楽しみになる。暮らしを楽しくすれば、仕事がはかどるし、気持ちも前向きになる。全部が良い方向に動く感じがして……。こういう生活の買い物がすごく好きなんです」
“好き”で選び、暮らしが整い、仕事が前に進む
SHOW-GOさんの買い物観は、“欲しいものを買う”という、とてもシンプルで誠実なもの。それは、世の中や他の人の基準でなく、自分が本当に欲しいものを選ぶこと。
「見栄だったり、承認欲求だったり。そういう理由で買い物をしたくないんです。買い物とは、シンプルに“生活を豊かにするもの”。だから、極端な消費というか、ただお金を使ったことで満たされるような消費はしたくないと思っています」
その姿勢は、SHOW-GOさんの原点であるビートボックスにも通じている。
「ビートボックスって、始めるのに本当にお金がかからないんですよ。最初はマイクもいらないし、楽器もいらない。自分を楽しませるために、自分自身が楽器になれるんです」
だからこそ、お金を使うこと自体に価値を置かない。必要だから、暮らしを良くしたいから、心が動いたから買う。SHOW-GOさんの基準は一貫している。
「仕事が好きなんです。お金を稼いで、欲しいものを買って暮らしを良くして、また仕事が楽しくなる。その循環が自分にとっての“生きている感じ”なんですよね」









